なぜ日本人は新築の家を買いたがるのか【2】
「なぜ日本では新築住宅ばかりが選ばれるのか?」というテーマの2回目です。
欧米諸国と比べて、日本の住宅市場がいかに新築中心なのか、そしてその背景にある構造的な問題について掘り下げていきます。
欧米は「中古住宅が主流」、日本は?
まず驚くべきは、住宅市場における中古住宅の流通シェアの違いです。アメリカ・イギリス・フランスでは、流通する住宅のうち80〜90%が中古住宅です。ところが日本では、わずか13.5%しか中古が流通していません。残りはすべて新築です。あまりにも、対照的な数値です。
ではなぜ、日本では中古住宅がこれほど流通しないのでしょうか?
原因① 建物の資産価値の考え方が違う
日本では、木造住宅の法定耐用年数が22年、鉄筋コンクリート造(RC)でも47年と定められています。これらは税法上の原価償却年数であり、実際に住めなくなる年数ではありません。ところがこの制度が、「築年数が経つと住宅の資産価値はゼロになる」という誤解を生み出しています。
実際には、しっかりと手入れされた住宅は築30年を超えても住めるものです。しかし不動産の評価は「建物」ではなく「土地」の価値に偏重しており、結果として住宅が1世代限りで消費されていく仕組みになっているのです。
原因② 景観や住み継ぎへの意識の薄さ
欧米では、一般住宅でも100年、200年と住み継がれることが珍しくありません。親が暮らした家を子が継ぎ、孫へと引き継がれることは、珍しいことではなく、むしろ、よくあることです。
一方、日本では親の家をそのまま子どもが使い続けるケースは非常に稀です。家は「建てて終わり」の消費財であり、次世代に引き継ぐという発想が薄い。そのため、家の外観も自分好みにカスタマイズされ、隣家との調和や街並みの美観への配慮が後回しにされがちです。
同じ分譲地でも、外壁の色や屋根の形状、玄関のドアの色までバラバラで、統一感がない。これは「この家は自分たちだけが住むもの」と考えられているためであり、将来売却する可能性や第三者に住み継いでもらう視点が欠けているからです。
原因③ 新築を優遇してきた政策
日本では、新築住宅を購入した際の税制優遇や補助制度が手厚く整備されています。住宅ローン減税、固定資産税の軽減、地方税の控除などがその代表です。
一方で、中古住宅を購入し、たとえ高額なリフォームを施しても、その建物自体の資産価値は評価されません。これにより、中古住宅を購入するインセンティブが働きにくい仕組みになっているのです。
高度経済成長期には、新築を大量に建てることが景気対策となっていたため、新築推奨型の政策が続いてきました。その結果として、住宅が供給過剰となり、今では空き家問題としてそのツケを払っている状況です。
結果:短命な家に、長期ローン
こうした背景のもと、日本では「せいぜい30年ほどしか持たない家」を人生最大の買い物として、高額なローンで購入するという矛盾が生まれています。
購入当初が最も価値が高く、翌日から値下がりが始まる——そんな住宅に何千万円も投資することは、冷静に考えれば非常にリスクが高い行動です。将来的に売却しようとしても、建物部分には値段がつかないため、立地次第では資産としての価値が著しく低いままとなってしまいます。
今後の住宅選びに求められる視点
日本の住宅政策や価値観は、いまだに「新築神話」にとらわれています。しかし、人口減少が進み、空き家が増え続けている現在、新築一辺倒の時代は終わりを迎えつつあります。
これからの時代は、建物の質や耐久性、そして住み継ぐことを前提とした設計・リフォームの重要性がより一層高まっていくでしょう。「今ある住宅をどう活かすか?」という視点で住まいを見直すことが、私たちリフォーム業界にとっても、お客様にとっても、新しい時代のスタンダードになっていくのではないでしょうか。
続く
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