なぜ日本人は新築の家を買いたがるのか【4】
シリーズ4回目は、「住宅を供給する側」、すなわち開発業者(デベロッパー)や鉄道会社がどのように街を作ってきたか、そして今起きている“空き家問題”や、タワマンブームの背景について、お話ししたいと思います。
「住宅地開発」という一大事業の始まり
日本で最初に大規模な住宅地開発を成功させたのは、関西の阪急電鉄でした。現在の宝塚や箕面といった大阪郊外のエリアに目をつけ、都心・梅田への通勤圏として住宅地を造成。そこに住宅を建てて販売するという、鉄道+不動産の開発モデルを築き上げました。
これに追随したのが、東京の東急電鉄。同様に郊外の未開発地を開拓して鉄道沿線を整備し、大量の住宅を供給して成功を収めます。
こうして昭和の時代には、「ニュータウン」と呼ばれる郊外型の住宅地が全国に次々と誕生し、都市部に通勤する多くのサラリーマン家庭の生活基盤となっていきました。
片道90分の通勤が「普通」だった時代
かつては郊外から都心まで、片道90分かけて通勤することが当たり前の時代がありました。特に東京では、埼玉や千葉、神奈川の奥の方からも毎日電車で通う人が多く、利便性よりも「買える価格」で住宅を選ぶしかなかったのです。
しかし、これは高度経済成長期や人口増加の時代に成立していたライフスタイルであり、人口減少が進む今の時代には、そぐわなくなってきています。
郊外住宅地に忍び寄る「歯抜け化」
現在、多くのニュータウンでは空き家が増え、いわば“歯抜け状態”が進行しています。かつて整然と並んでいた住宅群の中に、点々と空き家や廃屋が増えているのは、近年、誰もが目にしている日常の風景となっています。
このような現象は、少子高齢化、核家族化、そして若い世代の「都心志向」が加速していることによって生まれた構造的な問題です。
ではなぜ、都心には「タワマン」が建ち続けるのか?
ここで、疑問に思う方も多いはずです。
「これだけ空き家が余っているのに、なぜ都心では高額なタワーマンションが売れ続けているのか?」
その答えはシンプルで、今のライフスタイルが「都心で暮らすこと」に大きな価値を置いているからです。
通勤時間の短縮、買い物・医療・教育・保育などの利便性、そして“ステータス”としての都心居住。これらを手に入れたい人たちが増えており、都心に残るわずかな空き地や再開発エリアに「背を高くして人を詰め込む」タワマン建設が進められているのです。
タワマンの始まりは「コンパクトマンション」から
2000年代初頭、まだタワマンブームが本格化する前は、「コンパクトマンション」が流行していました。
当時は、年収1,000万円超のエグゼクティブな単身女性や、共働きで子どものいない夫婦(いわゆるDINKS:Double Income No Kids)をターゲットに、50㎡前後の1LDK~2DK程度のコンパクトな間取りの物件が多く販売されていたのです。
やがて時代が進み、ファミリー層までもが都心暮らしを希望するようになると、より広い住居が必要とされ、結果的に「上に伸びる」=タワーマンションの時代が到来しました。
タワマンの魅力とは?
なぜ、これほどまでにタワマンが人気なのか。理由はいくつかあります。
- 都心に暮らせる利便性
- ブランド性・ステータス性
- 資産価値が落ちにくく、換金性が高い
特に「資産価値が落ちにくい」という点は、将来的な住み替えや売却を視野に入れた購入者にとっては大きな安心材料となっています。
一方で、郊外の中古一戸建て住宅は前述のように再販しにくく、資産価値がつきづらい。これが住宅市場全体を“二極化”させている原因の一つでもあります。
空き家だらけの地方 vs タワマンで埋まる都心
つまり、今の日本では「人がいない場所に家が余り」、「人が集中する場所には家が足りない」という、矛盾する2つの現象が同時に進行しているのです。
- 地方や郊外のニュータウン → 空き家・老朽化・インフラ維持困難
- 都心部 → 高価格でも売れる・タワマン建設が止まらない
これは、単に住宅供給の問題ではなく、人口動態・都市計画・経済格差といった社会全体の課題とも密接に関係しています。
これからの住まいをどう考えるか?
私たちリフォーム業者の立場から見ても、こうした住宅市場の構造変化は無視できません。
空き家が増えていく一方で、新築の供給が止まらないという今の日本では、「今ある住宅をいかに再活用するか」という視点が、ますます重要になります。リフォーム・リノベーションによって住まいの価値を再発見し、住み継いでいく流れをつくることが、これからの課題であり使命だと感じています。
続く
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