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京町家をリノベする【6】

京町家リノベも、引き渡し直前のある日、足場の解体に立ち会っていました。
約五か月間、建物を包み守ってくれていた足場が外され、町家の全景が姿を現しました。その瞬間、胸に込み上げるものがありました。

足場屋さんは、工事の最初に入る業者です。工事前の姿を知っている人たちでもあります。そんな彼らが足場を解体する前に、中を見て「こんなにきれいになるんですね!」と感激していました。

今回の工事には、三十代の職人が多く関わっていました。大工、電気、左官など――それぞれが慣れない京町家の改修に携わっていました。そんな彼らが誇らしげなのを見て、この工事で彼らにも自信が付いたのだろうと思いました。

さらに、若い職人たちが京町家の風情を気に入っていた点も印象的でした。若い男性にも、京町家のレトロな和テイストの魅力が理解できる。
今回のお施主様は、間取りや設備の配置については明確な要望がありましたが、内装の雰囲気については「お任せします」と一任してくださっていたので、責任重大でした。職人たちの反応が安心材料になりました。

幕末期に建てられたと推定される町家。
外壁のトタン、内部のベニヤやプリント合板を剥がし、覆われていた土壁や柱・梁を露わにしたところ、昭和期の増改築部分の方がシロアリ被害や湿気で痛みが激しく、幕末期のもともとの部分の方が状態が良く、伝統工法の強さに驚かされました。

京町家は間口が狭く奥に深い。採光は限られ室内は暗く、夏は蒸し暑い。だから、風を通す設計がとても大切です。断熱を優先する現代住宅とは発想が逆。呼吸する素材を使い、空気を滞らせない。それが町家の理にかなった在り方だと身を持って学びました。

土壁や杉板は、単なる意匠ではありません。補修も容易で、身近な材料で再生できる。実は、昔の家づくりのほうが現在量産されている資材より、はるかにサステナブルなのだと、今更ながらに知りました。壁が崩れれば土を練って塗り直せばいい。竹も木も、身近にある手頃で安価な資源でした。

京都で最も恐れられてきたのは火災です。木造ゆえに焼失を繰り返してきた京都の歴史。その背景も踏まえながら、素材と構造を選ぶ必要があります。

内装も同様に、量産の既製建具を使う方が施工は簡単です。しかし、町家の良さを最大限に活かせるよう、建具屋で古建具を仕入れ、葦戸や板戸を取付ました。
京都の建具寸法はおおよそ1730ミリ前後。現代の標準ドアと比べ、かなり低い。背の高い人なら額をぶつける高さです。それでも、天井高2メートル20センチほどしかない京町家には、低い建具がしっくりと馴染みました。高い建具が開放感を生むのは洋風の価値観。和の空間では、抑制が美しさをつくります。

工事中、現場は仮設の白い照明に照らされ、山積みの資材と職人が行き交う混沌とした空間でした。お施主様には定期的に現場に足を運んでいただいていましたが、お施主様にしてみれば現場の状況からは完成形が想像できず、来るたびに不安な表情をしておられました。
それでも、打合せの最後には必ず「信頼しています」と言って帰られる。その信頼の重みをいつも感じて施工に携わっていました。

電気工事の仕上げの日。
器具が据え付けられ、いよいよ本設照明の点灯。
暗闇の中、ブレーカーを上げる。
一斉に灯りがともる。
この仕事を続けて十数年。何度経験しても、この瞬間は胸が震えます。
仮設の白い光ではなく、計画した照明が空間に灯る瞬間。
ダウンライト、ブラケット、間接照明が調和し、温かな橙色が室内を照らす。

外に出て、外側から家を眺めました。
雪のちらつく夜でしたが、町家の内部から漏れる灯りの温もりが、外の寒さを忘れされてくれます。


最後の洗いが終わり、整えられた空間を見たお施主様は、とても喜んでくださいました。
工事期間は、約5か月。設計も現場監理も予算管理も、すべてを一人で抱えて走り続けました。大変な重圧でしたが、報われた気がしました。

このプロジェクトは大変だったからこそ愛着がある、私にとって忘れがたい物件です。
工事は終わりましたが、京町家塾は続いています。わたしの京都での町家探求は、始まったばかりです。

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