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京町家をリノベする【4】

京都に住み込みながらの工事も、気がつけば2ヶ月近く経ったころ。
リフォームそのものは手探りではありましたが、ようやく少しずつ方向性が定まってきました。

ここに至るまで、地図を持たず航海をしているような不安な気持ちでした。
町家の改修経験が乏しい職人も心細かったと思いますし、私自身も「これで本当にいいのか」と自問自答しながら進めてきました。

しかし京都という場所はありがたいところで、周囲を見渡せば手本になる建物がいくらでもあるので、町を歩くだけで勉強になります。参考になる家や納まり、素材の使い方を観察しながら、少しずつ自分の中に地図を描いていきました。

町家の伝統工法をなるべく活かして再生させつつ、同時に施主が安全に快適に暮らせる住まいにするリフォーム。責任は重いですが、やり遂げなければいけません。

左官屋さんが本領を発揮

今回の京町家リノベで、私が楽しみにしていたことがあります。それは、左官屋さんに“本来の仕事”をしてもらえることでした。

現代のリフォームでは、左官屋の出番は減っています。
床のレベル調整やモルタル補修、サッシ交換後の埋め戻しなど、いわば補助的な仕事が中心になりがちです。本来は、土壁や漆喰を塗り上げる高度な技術を持つ、職人世界でも特に尊敬される業種なのに、です。

左官の仕事は、壁や床を仕上げる塗りの技術です。
洗い出しの床や、和室の土壁、漆喰仕上げ。こうした仕事こそが腕の見せどころなのに、今は新建材に押されて出番が減っているのが現実です。

だからこそ、今回の京町家では、できる限り自然素材で仕上げてもらい、腕を振るってほしいと考えていました。

土壁のメリット

今回の町家は、昭和40年代後半の増改築部分のほうが傷んでおり、幕末以前と推測される元の構造部分は、意外にも健全でした。
土壁も、下部の一部を除けば、しっかり残っていました。

通常のリフォームであれば、石膏ボードを貼った上からクロスで仕上げます。
けれど、京町家の専門家から土壁は京都の風土に合った合理的な素材だから、なるべく補修して活かしなさいと指導を受けています。

最近は、サステナビリティが叫ばれるようになりました。
サステナビリティとは、「持続可能性」という意味で、戦後の日本が推し進めてきたスクラップ&ビルドが見直され、地球環境の観点から将来にわたって豊かで住み続けられる社会を維持・発展させるという考え方に移行しつつあります。

日本の古い家は生来、手ごろでどこでも手に入る素材で、傷んだ箇所を少しづつ直しながら暮らすという、まさにサステナブルな方法で作られてきました。
金物を使わず、木材と石の躯体に、土や竹や和紙で出来ています。
なかでも土壁は、竹を編んで作った竹小舞に、水と藁を混ぜた土を塗るだけで簡単に作れる壁材です。
これ以上、エコでサステナブルな工法はないでしょう。

京都の夏はとても暑いので、町家は夏を基準に建てられています。
ウナギの寝床に例えられるように、間口が狭く、奥に深く、日当たりも悪い。
なるべく風が通るようにしなれば、木材が湿気て腐ったり、シロアリの被害にあってしまいます。
土壁は、通気性がよいと同時に、断熱性にもすぐれているため、夏は涼しく、冬は暖かく、京町家にはとても相性がよい材料なのです。

とはいえ予算は無限ではありません。
全面やり直しとなれば、費用は跳ね上がります。
左官屋さんに相談し、最適な自然素材仕上げができないかと頭を突き合わせました。

意識が高い若手職人に希望を見る

現場に来てくれたのは、いつもお世話になっているベテランの左官職人と若い職人のふたり。この若い方の職人が、実に頼もしかった。

滋賀など古い町並みが残る地域で土壁の修復を積極的に手がけ、伝統的な工法を学んでいる人でした。先輩格に対しても臆することなく意見を出します。
建設業界は年功序列が強い世界ですが、若手が伝統工法を学び、ベテランと対等に議論し、また若手の意見に素直に耳を傾けるベテランの姿に胸を打たれました。

職人人口は確実に減っています。それでも、伝統的な技術を学びたいという若い人がいる。その事実だけで、少し救われる思いがしました。

自然素材は「贅沢」なのか

左官屋さんから、「今は自然素材のほうが高いんですよ」と言われました。

土や藁といった天然素材より、人工的な樹脂素材を混ぜた材料のほうが安い。大量生産できるからです。もともと自然界にあるもののほうが高いという逆転現象、皮肉な話です。

そこで提案されたのが粉土(こつち)という素材でした。
乾燥させた粘土を粉状にしたもので、既存の土壁補修に適しています。天然素材でありながら施工性が高く、コストも抑えられる。完全な手練りの土壁ほどの手間はかからない。
これなら、現状を活かしながら自然素材で仕上げられる。これでいこう、と方向がまとまりました。

「ああでもない、こうでもない」と職人と知恵を出し合う時間は、本当に楽しいものです。
通常のリフォームはもっとスピード感があり、流れ作業のように進みます。
しかし町家リノベでは、職人と議論しながら、一つずつ決めていく。時間はかかりますが、若い職人と設計者が伝統工法を学ぶ場として学びが多く、充実していました。

続く

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