• リフォーム業界事情

なぜ日本人は新築の家を買いたがるのか【1】

今回は、日本人がなぜここまで「新築」や「持ち家」にこだわるのか、その背景にある社会構造や住宅政策をひもといてみたいと思います。

「賃貸より持ち家」「中古より新築」という価値観

日本では、欧米と比べても「持ち家信仰」が根強く、中古住宅の市場規模はまだまだ小さいのが現状です。とくに“新築信仰”とも言えるような価値観が広く浸透しており、「賃貸よりも購入」「購入するなら新築」「最終的には一戸建て」という思考が当たり前のようになっています。

この背景には、個人の価値観だけではなく、戦後から続く住宅政策の影響が大きくあります。

戦後の住宅事情と単身者向け住戸の大量供給

日本の住宅政策は、戦後の高度経済成長期とともにスタートしました。地方から都市へと若者が一斉に流入し、都市部ではとにかく住まいの確保が急務となったのです。

その結果、供給されたのは30㎡前後の1DKなど、単身者向けの狭い賃貸がほとんどでした。この傾向は1990年代以降も続き、都市部ではワンルームマンションが増加。一方、ファミリー向けの70㎡以上の賃貸物件は極端に少なく、賃貸で家族生活を送るのが難しいという現実があります。

なぜファミリー向け賃貸が少ないのかというと、貸主側にとってリスクが高いからです。広い部屋は空室リスクが大きく、退去後のリフォーム費用も高額。しかも日本では、賃借人の権利が比較的強く守られており、オーナーの自由度は高くありません。そのため、少人数で短期間借りる単身者向け物件の方が「安全で効率的」と考えられているのです。

「住宅すごろく」に見る持ち家ステータス

1970年代初頭、「住宅すごろく」という概念が登場しました。これは、人生のライフステージに合わせて住宅を“ステップアップ”していくという考え方です。

  1. 若い頃は狭い賃貸
  2. 子どもが生まれたら少し広めの賃貸か公営住宅
  3. 世帯収入が安定したら分譲マンションを購入
  4. 最後は庭付きの戸建て住宅で「終の住処」へ

この流れは現在も根強く、特に「最終的には一戸建てに住みたい」という価値観は、今の若い世代にも再び広がっている傾向があります。ペットを飼いたい、庭がほしいという理由で、マンションよりも戸建てを希望する20〜30代も増えてきています。

住宅政策が「新築購入」を後押ししてきた

こうした“新築信仰”を支えてきたのが、戦後から続く政治の後押しです。

たとえば1950年に設立された「住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)」は、住宅購入者に対して長期・低金利のローンを提供してきました。当初は抽選制でしたが、1980年には申し込んだ人全員が借りられるよう制度が拡充され、購入へのハードルが一気に下がりました。

しかもこの融資制度は「家族世帯」を優先しており、単身者は年齢制限などの条件が課されていました。つまり、結婚して家庭を築き、マイホームを買うことが「優等生のライフプラン」として奨励されてきたのです。

その後も、住宅ローン減税や給付金制度など、購入者を支援する制度は続々と用意されました。一方で、賃貸に住む人々に対する支援や制度改革は後回し。これが、「買わなきゃ損」という空気を生み出し、新築購入へと人々を駆り立ててきたのです。

今の住宅観は「選ばされた価値観」かもしれない

こうした背景を知ると、日本の“新築信仰”は、単なる嗜好ではなく、「国策の中で選ばされた価値観」であることがわかってきます。ライフステージが変わるたびに「広い家を買う」、そして「住宅ローンを新たに組む」。その連鎖は今も続いています。

続く

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