住宅リフォームのこれから~断熱について
テスラ
先日、ショールームに同行したお客様の車に乗せていただく機会がありました。
何かと話題の、テスラ社の電気自動車です。実物を見るのも初めてでしたが、スッキリと無駄のないデザイン、余計なものが一切なく、フロントのスピードメーター類やナビ画面さえもなく、ダッシュボード中央にタブレットだけが付いていて、ナビ情報もスピードも温度も全てが端末上に表示されるようになっていました。
日産の電気自動車「リーフ」には乗ったことがありましたが、性能はさておき、テスラとはデザイン・コンセプトがまるきり違います。
これが、これからの車の姿だなと。
不具合が出る、不祥事を起こしたなど、批判も多いですが、おそらく今後、ドラスティックに課題改善されていくでしょうし、これからの自動車産業は、テスラ社に限らず、EV車が牽引していくのだろうなと感じました。
Perfumeのオフィシャルミュージックビデオ『ポリゴン・ウェイブ』より。3人が乗っているのはテスラです。
ところで、「テスラ」は車のメーカー名として定着しましたが、発明家ニコラ・テスラに因んだ社名なんですよ‥という、照明オタク話をさせてください。
テスラは、交流電気方式を提唱し、直流式を推し進めていたライバルのエジソンと、どちらの方式が優れているかで対立した、電気界のスーパー天才です。もちろん現在は、テスラの交流方式が採用されています。
この辺りの歴史は、映画『エジソンズ・ゲーム』で詳しく描かれています。ドクター・ストレンジでおなじみ、ベネディクト・カンバーバッチがエジソンを、Xメンのビースト役だったニコラス・ホルトがテスラを演じています。照明マニアに限らず、電気に興味がない人にも、ちゃんと面白い映画ですので、おすすめです。
省エネの必要性
そんなEV車の未来を考えていたら、住宅の未来についても思いを馳せ、ここからが本題です。
「SDGs」、「脱炭素社会」などのワードを、最近やたらと耳にしたり、目にしたりしていませんか?
温暖化対策は待ったなしの課題ですが、日本は先進国の中でもこの課題への取り組みが遅れていました。ところが最近、大手企業を中心に、再生可能、脱炭素、省エネをキーワードとして全面に打ち出し始めました。
さらに、ロシア・ウクライナ戦争を起因としたエネルギー資源の供給問題がおこっています。電気代は2倍近く上がり、冬を迎えるのが怖いですね。
このような状況下でも、日本は2030年には温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減、2050年に完全なカーボンニュートラルを実現することを目標に定めています。
このように、脱炭素社会の実現と、エネルギー対策の両面から、今後ますますエネルギー効率の良い住宅にしていくことが急務となっているのです。
エネルギー効率の良い住宅とは、
夏は涼しく、冬は暖かい住宅のことを言います。このような家にするためには、断熱することが何より大切です。
これからの自動車がEVなら、リフォームのこれからは、断熱が鍵を握っています。
日本は長らく、温暖な国(北国と南国はもちろん別で)だという認識があったと思います。しかし実際には、日本の家は隙間風が入りやすく、冬はとにかく寒いです。お風呂上がりに、ヒートショックで亡くなる人も相変わらず多いのが実情です。
さらに昨今の夏は、亜熱帯地域のような暑さ。もう、エアコンなしで過ごせる気候ではありません。それにも関わらず、エアコンを使わないで自宅で亡くなる人も後を絶ちません。
断熱基準を満たしている既存住宅はわずか11%
このように、日本は今や過ごしやすい気候の国ではなくなっているにも関わらず、以下のような衝撃のデータが出ています。
既存の住宅のうち、現在の断熱基準を満たす住宅は全体のわずか11%のみ。
まったく断熱対策をしていない住宅は30%。
一方、新築住宅では、ZEHレベルも含めた省エネ基準適合率は、戸建住宅で85%、集合(共同)住宅でも72%にも及びます。
出典:国土交通省「第1回脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」資料より抜粋。統計データ、事業者アンケート等により推計(2018年)
このデータ結果から分かるのは、私たちリフォーム業者、中古住宅市場を発展させようと真剣に考えている建築関係者は、本気でこの断熱問題に取り組んでいく必要があるということです。
今からでもできる断熱リフォーム
ガチの断熱リフォームとなると、大変な工事になります。
断熱先進国の北欧やドイツの家を見ると、内部の断熱材を厚くしているので、壁の厚みもとても太いのが特徴です。外は氷点下30度の極寒でも、室内はぽかぽかのため、コートの下はTシャツのみという季節感のないファッションの人が多くて、びっくりします。
ガチムチの断熱材で家中の壁・床・天井を包んで、ぶ厚い壁に作り替える万全のリフォームなんて、時間的にも、予算的にも、とても無理と思う人も多いでしょう。すでにリフォーム工事済みだよ!どうしたら良いの?という人もいるでしょう。
今からでも間に合って、比較的手軽に出来る断熱リフォームをご紹介いたします。
家の中で、熱の出入りがもっとも大きい「窓」に内窓を
実は、一番熱の出入りが多い場所が、窓です。窓の断熱性能がアップすると、住まい全体の断熱性能は大幅に良くなります。冬の寒さだけでなく、夏もエアコンの冷気を逃さず適温をキープしてくれるため、温度を下げすぎる必要がなく、電気代を大幅カット、結露対策、防音、と良いことばかり。既存の窓の室内側に内窓を取り付けるだけなので、工事にかかる時間も半日ほどで完了する点も良いところ。
国や自治体は断熱工事を推進するため、助成金を支給するリフォーム支援事業を実施しています。補助金で、お得に工事できるケースもあります。
断熱ブラインド
もっとお手軽で、今すぐ出来ることはない?という方には、断熱ブラインドを取り付けるという方法があります。
一見、普通のロールスクリーンに見えますが、ハニカム構造で空洞の筒のようになっているプリーツを伸び縮みして開閉できるブラインドです。この空洞の中の空気が膜となって窓を断熱してくれます。
先日工事したお客様が付けていたのは、イケアのブラインドでした。
お値段も、一枚なんと¥5,000ぐらい!!私も、寒くなる前に買いに行こうと思っています!
https://www.ikea.com/jp/ja/p/hoppvals-cellular-blind-white-30290625/
断熱なくして、住宅に未来なし
供給過多な新築住宅よりも、既存の住宅を再生活用するべきだという考え自体には、何の迷うところもない私ですが、昭和だ、大正だと、古ければ古いほど価値があるかのように喜んでいるだけではもうダメだ、断熱していない住宅に未来はないと、考えを急激にアップデートしているところです。
断熱リフォームの第一人者、建築家の竹内昌義氏が、断熱の必要性について、わかりやすく解説している記事を、サッシメーカーのYKKが発行しています。下にリンクを貼っていますので、ぜひお読みください。