豊島へ

直島ツアーの最終回です。
直島で一泊、翌朝は豊島へ。「とよしま」と書いて『てしま』と読みます。

後述しますが、若干のドタバタがありながらも、なんとかフェリーで無事に到着。

直島から20分ほどの距離にも関わらず、景色が違います。より島村らしい、素朴な雰囲気です。

豊島横尾館

最初に訪れたのは、『豊島横尾館』。アーティストの横尾忠則と建築家・永山祐子が古民家を改修した美術館。
入口と外観に嵌め込まれた赤いガラスが、通行人を妖しく誘い込みます。横尾忠則のキッチュな世界観が建物にも空間にも表現されていて、とても好きでした。

煙突のようなタイル貼の円塔。中は、横尾忠則の空間インスタレーション。

石を毒々しい赤にペイントした庭園。横尾忠則にとって、赤は象徴的な色です。

豊島美術館

設計ユニットSANAAの西沢立衛とアーティスト内藤礼のコラボレーション、豊島美術館。
今回の旅の目玉であり、最も来たかった建築です。

写真撮影は、もちろん禁止されている上、外から眺めているだけでは全貌が分からない建物です。
瀬戸内海を一望できる丘に、半分地中に埋まっているような形で建造されています。

広さ約40×60m、最高高さ4.3mの空間に柱が1本もないコンクリート・シェル構造の内部の天井に、2箇所の大きな穴があり、周囲の風、音、光を内部に直接取り込み、自然と建物が呼応する有機的な空間。

圧倒されます。
本当にすごいものを見たと実感した、アートと建築の融合作品でした。

ここは小学校?というぐらい、禁止事項が多い豊島美術館

しかし、素晴らしい場所であっただけに、残念だったことがあります。

入館する前に、小さな音でも響いてしまうので、静かに鑑賞するよう説明を受けます。

コンクリートの地面には、よく目を凝らして見ないとわからない、とても小さな穴が所々に開いており、そこから水の滴が流れ出てくる、その水の辿る雫もアート作品の一部となっています。

水溜りが出来ているのが不思議で、水の流れがある場所に近づいていきました。すると、すかさず係員が近づいてきて、「鑑賞を楽しんでもらって結構なのですが、地面にも小さなオブジェ作品があるので、注意して歩いてください。」と言われました。

入館前にも、地面には気をつけるように説明を受けており、こちらも理解して、そっと静かにゆっくりした動作で、館内を鑑賞していたにも関わらずです。

何度もここを訪れている慣れた様子の入場者もたくさんおり、寝っ転がったり、ヨガのポーズを取ったり、思い思いに空間を楽しんでいました。

それなのに、なぜか注意を受け、腑に落ちませんでしたが、気を取り直して眺めていると、音を消していたスマホの点滅に気がつきバッグの中から少しスマホを見ていたら、またまた係員が飛んできて、

「携帯を見るのは結構ですが、ほどほどにしてください」と、またしても注意を受けました。

騒がしくしたり、やかましく話していたなら、注意を受けても仕方ありません。また、当日の服装も、不審に思われるような格好ではなかったはずです。国内、海外共に、多くの美術館を訪れており、このような場所でのマナーもわきまえているつもりです。

とにかく、係員のマークが過剰で、作品が素晴らしいがゆえに、心ゆくまで楽しむことができませんでした。
過去に、来場者からよほどひどい目に遭ったための防御策なのかもしれませんが、アートは、もっと自由に思い思いに楽しめるものなのではないのでしょうか?

岡山大学のJUNKO FUKUTAKE TERRACE

豊島から、再びフェリーとバスを乗り継ぎ、岡山に移動。
新幹線出発まで、まだ時間があったので、岡山市内を見学。
妹島和世と西沢立衛のSANAAが設計した、岡山大学の学生たちと地域が繋がる場として設けられたテラス。

鋼板の屋根は波のような形状で、巨大にも関わらず、軽やかに宙に浮いているように見えます。溶接しているはずですが、どこにも跡が見えないほど綺麗な仕上げです。こんなテラスで過ごせる地元の人が羨ましい!

先日、世界の優れた芸術家に贈られる世界文化賞を、SANAAが受賞しました。嬉しいニュースです。
金沢21世紀美術館にも行こうと思います。

岡山県天神山文化プラザ

天神山文化プラザは、ル・コルビュジエに師事した前川國男が設計した県総合文化センターです。ちょうど、日が沈みかけている時間帯で、モンドリアンの絵画のような色使いが、とても映えていました。

インフラを工夫してほしい直島

直島と豊島のアート・建築のクオリティの高さ、瀬戸内の景観の美しさは、海外の観光客にも驚嘆される素晴らしさだと思いました。

ですが、インフラ整備はまだまだ改善の余地があると思います。
まず、直島から豊島へのフェリーの手配。事前にネット予約が出来るようになっていれば良いのですが、ターミナルでの販売しか方法がありません。

フェリーの時間を事前に確認し、旅のスケジュールをたてていたのですが、当日の朝、フェリーの切符を買おうとしたところ、直島から豊島行きのフェリーはないと言われました。

確かによく見たら、夏期期間中と平常時でフェリーのスケジュールが違うと表の下に注意書きがありました。しかし、大変分かりづらい。よほど、目を凝らして見ないと見つけられない。

午後から『豊島美術館』をネット予約をしていたので、チケット代が無駄になってしまいます。
美術館の入場券は、事前にネットで予約購入します。入場人数を制限しているため、チケットを用意していない場合、何時に入館できるかわからないので、事前購入した方が良いようになっているのです。

それなのに、フェリーはネット予約ができないなど、バランスが悪い。さらに、ホテルが少なくて困りました。
コロナで大変だったと思うのですが、これから観光客は戻ってくると思いますので、もう少し工夫がほしいと思いました。

厳しいことも言いましたが、アートと建築の完成度の高さ、自然の美しさは、絶対に行く値打ちがあります。海外の一流の避暑地にも引けを取らないでしょう。

今回は時間が足りず行けなかった、犬島と高松にも次回は行きたいと思います。