『お家賃ですけど』

▪️著者:能町みね子
▪️発行者:文春文庫

能町みね子さんの本『お家賃ですけど』。
昭和の古い下宿アパート「加寿子荘」で暮らした時の思い出を書いた自叙伝です。

私は和洋を問わず、古い建築が好きで、好きなあまり、この職業を選んだほど。
間取りやインテリアがどうなっているのか想像しながら、建物を眺めるのが大好きな子供でした。

しかし、団地、共同アパート、長屋、文化住宅などを、外から愛でてはまいりましたが、実際にそのような古い住宅で暮らした経験は一度もないのでした。

古い映画や小説を鑑賞することで、建物の中の暮らしを覗き見してきたような気がします。

この本も、能町さんが古いアパートでどんな生活をしていたのかと興味津々、一気に読みました。

建具、鍵やタイルのデザインなど、古い家ならではの細かなディテールへの愛情が溢れていて、隙間風で寒い冬、お風呂がない、共同便所である等々の不便さを補って余りある様子が、レトロ建築好きとして共感しきり。
このアパートで暮らした数年間、暮らしの中の一瞬一瞬を慈しんでいたことが、文章の隅々にまで伝わっています。

家と人との関係は、人と人との関係と同じなのです。

 

『ホモ無職、家を買う』

▪️原作:サムソン高橋 作画:熊田プウ助
▪️発行者:株式会社実業之日本社

すごいタイトルのこちらの書籍は、能町みね子さんのパートナーのサムソン高橋さんの本で偶然に見つけたのですが、もうびっくりするぐらい面白かったです!

なけなしの貯金をはたいて購入した3階建ての一戸建てを、DIYリフォームしていく様子を愛情たっぷりに描いたコミックエッセイです。
古くてボロボロの家を、苦労しながら修繕し、好みのインテリアに改良していく過程が、ワクワクします。

この愛すべきマイホームにたどり着くまでの、サムソンさんの住まいのヒストリーがまた秀逸!
荒んだ子供時代の家、休む暇なく仕事していた20代の頃の家、家賃が安い以外に取り柄のない家など転々としながら、ついに手に入れたサンクチュアリ。

空虚な恋愛を繰り返してきた主人公が、真実の恋人とついに巡り合うラブストーリーそのもの。

改めて、家と人は同じだという思いをあらたに。
家の歴史=人の歴史。

どちらの本も、家へのラブレター。
おススメです。